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『危険と管理』第32号目次/序文

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『危険と管理』第32号目次/序文

第32号『起業危機管理と家庭危機管理』 2001年3月

目次

はしがき 亀井 利明

●大会報告論文

  • 「起業危機管理のあり方」植藤正志
  • 「起業危機管理のあり方」竹内準治
  • 「起業危機管理のあり方」清沢康弘
  • 「ベンチャー起業における危機管理に関する一考察」松本峯治
  • 「環境問題と経営戦略型リスクマネジメント」吉川吉衛
  • 「経営戦略型リスクマネジントと環境経営」亀井克之
  • 「韓国の電子商取引と環境リスク」徐聖錫・張在雄

●部会報告論文

  • 「リスクマネジメントと性格」廣島克佳
  • 「リスク心理面からアプローチした保険設計について」後藤茂之
  • “The Function of Family Risk Management : An Empirical Study on Life Satisfaction and Risk Perception/Risk Coping”Yumiko Nara(奈良由美子)
  • 「学力崩壊とリスクマネジメント」篠原寿一
  • 「ファミリー・リスクマネジメントと家庭財務管理」戸田昭直
  • 「地域社会における家庭危機管理」古谷光一
  • 「クロスボーダーM&Aの増加とリスクマネジメント」川本明人
  • 「保険会社経営の世界比較」朴恩会・南相旭

●15分スピーチ資料

  • 「市場飽和リスクとソシヤルニーズについて」井上喬
  • 「家庭危機管理とコーディネーションの実践」土井宣子
  • 「シッカリサービスマークの管理」矢間治茂
  • 「危機と偶然」伊東義高

はしがき

日本リスクマネジメント学会 理事長 亀井 利明

 周知のとおり、現在では危機管理はリスクマネジメントの一部とみなすか、両者は同一のものとみなすことが通説となっている。

 その限りにおいて、リスクマネジメントはその実施主体によって企業危機管理、家庭危機管理、行政危機管理に類別される。日本リスクマネジメント学会は、これらを全般的に取り扱ってきたつもりでありが、メインとして研究されてきたのは企業危機管理である。

 企業危機管理はその対象とするリスクによって、(1)保険管理型、(2)危機管理型、(3)経営管理型、(4)経営戦略型に細分される。(1)と(2)は防災管理型ないし災害管理型で、純粋危険を対象とするものである。これに対し、(3)は生産、販売、財務、労務等の部門管理リスクを対象とするもので、純粋危険のみならず、受動リスクとしての投機的危険をも対象とするものである。

 また、(4)は全般管理リスクや戦略リスクを対象とするもので、能動リスクや行動のリスクとしての投機的危険あるいは経営外部危険としての環境リスクを対象とするものである。したがって、それは多くの保険学者たちの能力の範囲をはるかに超えるものである。

 これはまず第1に新製品の開発、海外市場への進出などに伴うリスク対策であるが、第2に異業種進出、事業転換、M&Aなどの企業内起業や、独立起業・ベンチャービジネスの起業に伴うリスク対策である。

 第2のリスクを対象とするものは、経営戦略型リスクマネジメントの一部ではあるが、新たなるジャンルとしての起業危機管理となり、専門的に研究すべきものと考えられる。

 私は1971年に環境リスクマネジメント、1989年に経営戦略型リスクマネジメント、1997年に起業危機管理についての研究発表を行っている。その詳細は『海上公害論』(ミネルヴァ書房)、『環境論序説』(法律文化社)、『RM双書第6集』(日本リスクマネジメント学会)、『起業危機管理とリスクマネジメント』(関大経済・政治研究所)、『危機管理カウンセリング』(日本リスク・プロフェショナル協会)等を参照していただきたい。

 ところで、2000年9月大阪市立大学で開催された日本リスクマネジメント学会全国大会の統一論題は「経営戦略型リスクマネジメント」であった。その第1シンポジウムは「環境問題とリスクマネジメント」であり、第2シンポジウムは「起業危機管理のあり方」であった。

 これは正にわが意を得たりということで、大会で私も基調報告を行った。しかし、その論文は残念ながら紙幅の関係で本会報には掲載していただけなかった。

 日本リスクマネジメント学会の財政状況は会費収入やRP制度の収入を合わせても、必ずしも良好とはいえない。そのため、会報は大会報告を中心として編集し、若干の部会報告の論文の掲載にとどめる予定であった。しかし、格調高い部会報告の論文が多数集まり、予算オーバーの理由でユニークな論文の掲載を断ることをしなかった。

 部会報告の論文は主として家庭危機管理に関するものであるが、これらは「生命保険や年金の上手な利用の仕方に少しばかり脚色したにすぎない、程度の低いファミリー・リスクマネジメント」ではない。ファミリー・リスクマネジメントから脱皮し、学問としての格調を保った家庭危機管理への道を歩もうとするものである。それには当然ながら心の危機管理に論及されねばならない。かくして、本双書の書名を「起業危機管理と家庭危機管理」とすることになった。

 保険企業の破綻や倒産が始まった。これは保険企業が経営管理型ないし経営戦略型のリスクマネジメントを怠った結果である。今や保険企業は家庭や企業のリスクマネジメントを口にすることが滑稽で、なすべきことは、自らのビジネス・リスクマネジメントに徹することである。

2001年1月

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