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『危険と管理』第31号目次/序文
第31号『高齢化とリスクマネジメント』 2000年3月
目次
はしがき 亀井 利明
●論文
- 「老後の生活保障からみた介護保険」阿部裕
- 「高齢化リスクとリスクマネジメント」石渡善紹
- 「高齢化と危機管理」尾松克治
- 「環境問題とリスクマネジメント」南方哲也
- 「環境リスクマネジメントと原子力保険」徳常泰之
- 「企業の危機とカウンセリング」中居芳紀
- 「企業倒産モデルを用いた未公開企業における企業格付けの試み」白田佳子
- 「監査役の心理的負担の軽減とリスクマネジメント」城戸義和
- 「RMと危機想定」伊東義高
- 「心の危機管理と癒しの行動科学」亀井利明
- “Marine Cargo Insurance and Shipowner’s Liability Insurance under Enforcement of the Hamburg Rules” Eun Sup Lee
- “Regulation of Korea’s Insurance Industry under the IMF Program” Lee, Eun-Sup and Ha, Choong-Lyoung”
- 「経営戦略とリスク -日産ルノー提携・次世代自動車開発・知覚リスクとマーケティング戦略をめぐって-」亀井克之
はしがき
日本リスクマネジメント学会 理事長 亀井 利明
1990年代は終わった。2000年代はどんな時代になるのであろうか。リスクマネジメントや危機管理を研究している者はとかく過去の出来事や事故の分析に専念し、「かくあるべきであった」という反省論や「もしこうしておれば」「誰かが何かをしておれば」式の議論を展開している。
確かに、1999年の世界情勢や経済事情はきびしく、かつけわしいものがあった。すなわち一般人の凶悪犯罪、組織的な企業犯罪、正体不明の怪事件、オカルト現象、セクハラ事件、家庭崩壊や学校崩壊の進展、企業倒産の増加、リストラの進展、高齢者への無慈悲な行政や制度改正等、全く明るいニュースに乏しかった。
そのため、多くの人々は、心がむしばまれ、心の癒しや生きがいを求めてカウンセリングに走り、セルフ・コントロールの道を求めた。それゆえ、危機管理コンサルティングや危機管理カウンセリングの必要性が叫ばれ、今後、その必要性がますます増加してくるはずである。
危機管理はとかくその中心が企業におかれるが、企業を構成するのは人で、その人にはそれぞれ家庭がある。その家庭が今や社会情勢の悪化や精神文化の退廃により崩壊の危機に瀕している。
老人介護、夫婦関係、嫁・姑問題、親子関係、家庭内暴力、不登校、いじめ、不法行為等々、なに一つまともに解決されていないし、有効なコンサルティングやカウンセリングを通じての健全なマネジメントが実行されていない。
高齢者問題を含めての家庭危機管理は今後とも、理論と実践の面で充実していかねばならない。そういった意味で、FCCやRCC制度(日本リスクマネジメント学会認定資格)の創設は時宜に適している。
会報第31号のタイトルを「高齢化とリスクマネジメント」としたのはこのような問題意識からである。
1999年9月25日、26日に東北福祉大学で行われた第22回全国大会は大会委員長の江尻行男氏および東北福祉大学関係者の全面的協力により、盛大に開催され、稔り多き成果を収めた。その際の報告原稿が本誌に掲載されているが、論文作成が間に合わなかった人については、そのレジュメが資料という形で掲載されている。
また、これとは別に、入試リスクやメンタルヘルスについても資料をお寄せいただいた。関係者各位に感謝の意を表する。
2000年1月10日