日本リスクマネジメント学会

Japan Risk Management Society since 1978

シンポジウム

「地震災害とリスクマネジメント」開催

1995.4.4.

亀井 利明

 

 日本リスクマネジメント学会は1995年4月4日(火)、春季大会の行事として阪神大震災に関する危機管理をテーマとしたシンボジウムを開催した。
 当日は午前十時半に評議員会会長徳山喜昭氏の開会の辞に始まり、亀井利明(関西大)、南方哲也(長崎県立大)、大城裕二(岡山商大)、戸出正夫(白鴎大)、田中茂和(関西大)、須田胱(愛知学泉大)、川本明人(広島修道大)、竹内準治(四国大)氏等による研究発表が行われ、それをめぐっての白熱したディスカッションが行われた。
 延々5時間半におよぶシンポジウムはわが国を代表するリスクマネジメント学者によるものだけに参加者も120名を数え、NHKを始めとするテレビ局、各新聞社などからの取材を受けた。
 リスクマネジメント(RM)には、行政(官公庁)RM、企業RM、家計RMなどがあるが、その中心は企業RMである。企業RMは災害管理型RM(危機管理型RMと保険管理型RM)、経営管理型RM、経営戦略型RMに分岐ずる。
 今回のシンポジウムは地震を対象としているので、行政RM(行政危機管理)と企業RM中の災害管理型RMを中心としてディスカッションが行われた。
 それは極めて他方面に及んでいるので、その取りまとめは非常にむずかしいが、一様に指摘されていたことは、(1)政府や地方公共団体の危機管理の欠如、(2)企業の危枝管理マニュアルの不完全性、(3)地震予知の無力性、(4)地地震保険の不完全性についてであった。とりわけ、きびしい批判があったのは(1)と(4)についてである。すなわち、(1)については、米国のFEMAのような強力な粗織作り、危検管理のシステム化、危検対応手段の選択に対する意思決定の迅速性、防火・消火・医療・輸送業務等の処理と電話・通信業務の整備、ライフラインの確保、安全な建設基準への志向、災害金融の拡充等が指摘された。当日、損害保険業界からも出席者があったが、地震保険に対するきひしい批判があった。損害保険会社が支払った保険金は2,OOO億円、国民の義捐金が1,5OO億円という数字があけられ、「弱きものよ、汝の名は地震保険」という声があがった。早急な改訂が望まれる。(商学部教授)

『関西大学通信』第237号 (1995年6月12日)より


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